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Ants Wedding's History

美意識を軸に、時間とともに進化する物語

ファッションフォトの感性を、ウエディングの世界へ

広告業界で活躍する数人のファッションフォトグラファーたち。 中心にいたのは、横山と工藤。 彼らは東京・日本橋に集い、ウエディングという舞台に新しいまなざしを向けた。同年、マンダリン オリエンタル 東京でのウエディング撮影。それは、ただの仕事ではなく、未来への扉だった。 ドレスの質感、空気の温度、まなざしの奥にある感情―― ファッションの感性で、それらをすくい上げる新しいスタイルが、ここに産声を上げた。

ただ、撮るだけでは、足りなかった

美しいだけでは、届かない。
記録するだけでは、遺らない。私たちは気づきはじめていた。私たちは気づきはじめていた。

シャッターの音の向こうに、まだ誰も見たことのない物語があることに。花嫁の仕草に、空気の揺らぎに、言葉にならない感情にそっと寄り添い、その瞬間が最も輝く光を見つけ出すこと。

衣装も、場所も、光も、構図も。ひとつの美学となった。アルバムは記録の箱ではなく、その日の空気を封じ込めるアートブックへと変わっていく。

揺らいだ日々の中で、変わらなかったもの

3月の空が、深く裂けたあの日。私たちは光のありかを、あらためて探しはじめた。
日常は儚く、未来は不確かで、それでも人は、大切な人の手を握りしめていた。

結婚式とは何か。写真とは何を残すものなのか。
「撮る」ことの意味が変わった。
「残す」ことの価値が深まった。
悲しみのなかに、寄り添うようにして始まった春。

私たちは、人生の節目に灯りをともす存在でありたいと、静かに、そして強く、心に誓った。

美意識が、美意識を引き寄せていく

ひとつひとつの現場で積み重ねた、丁寧な撮影。花嫁の想いに耳を澄まし、美しく在ることに誠実であろうとする姿勢。

その静かなこだわりが、やがてホテルやプランナー、花嫁たちの間で、“ANTSWEDDING”という名前とともに語られるようになっていった。

写真集に触れた瞬間の、ため息。一枚の写真が空間の空気を変えるという実感。評判は、広告ではなく、共鳴によって広がっていく。

この年、私たちの世界観は、
“知る人ぞ知る存在”から、“選ばれる存在”へと変わり始めた。

美しい“写真”ではなく、美しい“人”を撮る

世界では、WPPIをはじめとする国際コンペティションで被写体の個性を抽象化し、演出の美学を競うような作品が台頭していた。花嫁が誰であっても成立するような、匿名性の高い、完成された“画”たち。

でも私たちは、そうはなれなかった。モデルのような完璧さではなく、“その人にしかない表情”を信じたかった。
肩の角度、まなざしの揺らぎ、内に秘めた誓い。

人生に一度だけ訪れる「その瞬間の、その人」を、
確かに、美しく、残したかった。
時代の潮流に背を向けるのではなく、静かに、芯を持って、アンツは自分たちのスタイルを貫いていた。

ドレスを着ることと、結婚することは違う

世界が止まり、結婚式が消えていった。
誰もが迷いの中で、それでも何かを残そうとしていた。

フォトウエディングが急増し、「とりあえず写真だけでも」という空気が広がっていた。

でも私たちは、そこに違和感を覚えていた。ドレスを着て、ポーズを取るだけでは、あの日、あの空気、あの人の涙は、決して写らない。私たちが撮りたいのは、演出ではなく、人生の節目としてのリアルな時間だ。
誓いの言葉、重なる手、湧き上がる拍手──
それらすべてがあってこそ、ウエディングという名の写真になる。

だからこの年も、私たちは“式のある結婚”にこだわった。流行ではなく、信念に従って。

写真で伝えきれないものを、映像で表現する

アンツはこの年、ビデオ事業を立ち上げた。
でもそれは、単に「動画も撮れます」という拡張ではない。私たちが求めたのは、写真だけでは伝わらない想いを映像でつくること。

美しく整えたフレームではなく、人の温度や、間のゆらぎ、声の震えまでも残したかった。静止画では届かない感情が、映像には宿る瞬間がある。

そして映像では掬いきれない静けさが、写真にはある。
ふたつの表現を、対立させるのではなく、補い合い、響き合うものとして。

「動く詩」としての映像を。
それが、私たちの次なる挑戦。

見たことのない世界を、広げる

これまで、無数のまなざしと出会ってきた。
光と影、喜びと涙、すべてが私たちを導いてくれた。

けれど私たちは、もう一歩先を見ている。
誰もまだ見たことのない、美の在りか。
誰もまだ語っていない、人生のかたち。
写真で、映像で、私たちはこれからも問い続ける。

美しさとは何か。
結婚とは、人生とは、祝福とは。
その答えは、まだどこにもない。
だからこそ、私たちは創りつづける。
見たことのない世界を、広げていくために。

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